浄化槽に虫がわくのはなぜ?駆除や予防の方法、注意点などを詳しく解説
「浄化槽に虫がわく」なんて、とても衝撃的なフレーズですが、浄化槽を深くまで覗いた訳でもないのに、浄化槽に虫がわいていることに気付くのは何故でしょうか?
恐らく、浄化槽の点検の時などにマンホールを開けたときや、トイレから虫が這いだしているところに出くわしたときなどではないでしょうか?
大量発生すると目にしただけで気持ち悪い虫ですが、それが自宅の浄化槽で起きていると思うと一刻も早く何とかしたいです。
では、その浄化槽にわいた虫に対してどのように対処すればいいのか、予防はできるのかなど、次にマンホールを開けたときのことを考えても不安にならなくて済むように、徹底解説します。
目次
浄化槽と虫
浄化槽は、その中が何槽にも分かれていて、様々な方法で家庭排水を浄化する、いわゆる「家庭の汚水処理場」です。
「虫がわいた」と聞くと「きれいにしておけば虫なんてわかないのでは?」と思うかもしれませんが、実はそんな単純な問題ではないのです。
浄化槽に欠かせない「生き物」が棲んでいる
浄化槽は、汚水を固体と液体に分けたり、河川に放流する前に消毒したりと、環境を守るために汚水を浄化します。
その浄化のプロセスの中に「微生物による有機物の分解」があります。
有機物とは汚水の中の汚れのことで、微生物はその有機物を食べることで分解し、河川に放流できる程度にまで浄化してくれるのです。
浄化槽は、そんな微生物という小さな生き物の力を借りて、汚水を浄化しているのです。
何故浄化槽に虫がわくの?
では、マンホールを閉じていれば他に侵入経路が無さそうな浄化槽に、微生物でもない虫が何故わくのでしょうか?
実際は「わく」のではなく、外から成虫が侵入し、浄化槽内に卵を産み、それが孵ることで虫がわくのです。
そして、虫がわくことを助長する要因は他にもあります。
例えば、浄化槽内に空気を送る役割のブロワーに異常や故障が起きて機能が低下すると、微生物が死滅するなどして汚泥が分解できなくなります。
他にも、持病があり投薬をしている住人の排泄物は、微生物の汚れの分解に良くない影響を与えると言われています。合併浄化槽の場合は、影響は少ないとされています。
微生物が減ると腐敗が進み、害虫が棲みやすい環境となってしまいます。
何らかの状況でマンホールを開けたり、またはきちんと閉まっていなかったり、特に古い家の場合、あちこちの隙間から家の中に入り込み排水口をつたい、浄化槽内で繁殖することもあります。
浄化槽にわく虫の種類や違い、及ぼす害
では、浄化槽にわくのはどんな虫で、どんな害を及ぼすのでしょうか?
浄化槽にわきやすい、代表的な虫を紹介します。
チョウバエ
浄化槽内では汚水を固体と液体に分離しますが、固体は底に沈殿する汚泥と、微生物に分解される過程で発生するガスを含んで水に浮くスカムとがあります。
汚いところが好きなチョウバエは、浮いているスカムに産卵し、孵化した幼虫は水の中で過ごします。
別名「便所バエ」と言われ、浄化槽にわく虫で一番多いのがチョウバエで、ハートを逆にしたような羽の形をしており、身体全体がうっすらとモコモコの毛で覆われています。
卵からたった2日で孵化し、その後2週間前後で蛹になり、わずかその2~4日後には成虫になるという、超スピードで成長するチョウバエは、孵化したら排水口などを辿って浄化槽から出てきます。
体調は約4~5mmで、濾床(ろしょう。)バエとも呼ばれています(濾床とは、浄化槽のしくみの一部のこと)。
汚れて常に濡れているところから発生するので、お風呂の浴槽下や、台所の排水口などにも産卵します。
そういった環境で繁殖し生活する害虫ですので、勿論大変汚れていて、住居内の壁や食品に留まるなどして汚染しながら飛び回ります。
アメリカミズアブ
別名「便所バチ」と呼ばれ、一見するとハチのようにも見えるアメリカミズアブ。
成虫は体長約6~20mmなのに対し、幼虫は20~27mmと、成虫よりウジ様状態の幼虫の方が大きく、大量にわくと非常に気持ちが悪いです。
チョウバエと同様、スカムに産卵し、水の中で成長しますが、蛹になるために一度外へ出る為、ウジに似た幼虫が排水管を伝い、トイレなどから這い出てくることがあります。
成虫になっても山や川にいるアブのように人を咬むことはありませんが、汚いところから大量に発生する様子や、ハチに似た容貌に対する恐れから、不快害虫として大変嫌われています。
性質として、家屋への侵入能力が恐ろしいほど高く、食品や食材などへの混入も多く、誤飲し人体から幼虫が排泄されたケースもある、非常に迷惑な害虫です。
チカイエカ
チカイエカは水で産卵しますが、幼虫期はチョウバエやアメリカミズアブと同様に水の中で過ごします。
「地下家蚊」なので名の通り、温度や湿度が一年を通してある程度保たれる地下でそのまま繁殖を繰り返し、生活・越冬します。
成虫は夜に人を刺しますが、住処が屋内であることと、寒さに強いため、通常の蚊のように夏だけ刺すのではなく、冬にも人を刺します。
当然、マラリア等の感染症を媒介するので、危険な害虫と言えます。
産卵数も通常の蚊より10倍近くを生みつけるため繁殖力が強く、非常に厄介です。
サカマキガイ
他の巻貝とは逆の左巻きが特徴である、1cmほどの小さなサカマキガイは、何でも食べてしまう雑食性で、浄化槽内で活躍する微生物を食べ減らして処理能力を低下させるうえ、その糞で処理水の悪化を引き起こします。
びっしりと大量発生するので、浄化槽内の装置に不具合を招くこともあります。
サカマキガイが浄化槽に侵入するのは、浄化槽の清掃時や施工時に、サカマキガイが生息する場所の水を使用したり、浄化水の放流先の水位が上昇して浄化槽内に水が逆流したりして入り込むのが原因といわれています。
自身に雄雌の両性を持っているので1匹いれば繁殖が可能、浄化槽内では壁面に産卵し2週間で孵化、約4ヵ月で成虫になり、その後約2日ごとに数十個から100個程の卵の塊(卵塊)を、1年の寿命の間に寒い冬を除いて産み続けます。
浄化槽で孵化するとほとんどがそこで寿命を終えますが、夜行性なので常に暗い浄化槽の中では特に周期が決まらず活動しています。
浄化槽にわいた虫の駆除や予防の方法
浄化槽は微生物の力を利用して汚水を浄化しているので、殺虫剤を使用すると、微生物を殺してしまうのではないかと思いますよね。
微生物の活動に影響を与えず、害虫だけを駆除する、または予防するためには、浄化槽専用の殺虫剤を使用しましょう。
それでは、浄化槽の虫対策には、どんなものがあるのか見てみましょう。
直接スプレーするタイプ
住居内でも殺虫スプレーを使用することはあると思いますが、それが浄化槽の害虫駆除にも効くかどうかはまた別なのです。
浄化槽内に直接スプレーするタイプの殺虫剤は、浄化槽内に多いチョウバエなどにターゲットを絞った成分が含まれていて、広範囲に均一に噴射して使用します。
虫をめがけて直接噴射する通常の殺虫スプレーとは違い、飛んでいる成虫はもちろんのこと、幼虫が成長できなくなる成分も含まれていて、羽化できずにやがて死に至ります。
マンホール裏に吊るすタイプ
浄化槽の蓋の裏などに吊るして使用する、プレートタイプの殺虫剤は、殺虫成分が浄化槽内に充満することで害虫を駆除します。
こまめに清掃できない場合などに最適で、約3ヵ月という長期にわたって効き目が持続します。
浄化槽内に飛んでいるチョウバエなどの成虫に効果があり、スカム内や水中にいる幼虫には効き目がありませんが、外部から成虫が侵入してくるのを防ぐことが可能なので、虫除けにもなります。
廃棄する時は、浄化槽内に捨ててしまうと微生物に影響が出かねないので、地域の分別の指示に従って廃棄してください。
錠剤や粒剤など、溶かすタイプ
吊るすタイプと併用したり、浄化槽に直接投げ込んだりと、固形薬剤を溶かして使用するタイプのものは、水の中やスカムの中にいる幼虫に対して、成長や羽化を阻害し致死させるような形で効果を発揮します。
スカムやヘドロのように水気が少ない場所には、水で溶いてから投入します。
粒剤は、トイレや排水口などからも手軽に投入することができ、雨水桝など気になるところにも直接使うことができます。
サカマキガイの駆除剤
サカマキガイを駆除する薬剤は、皮膚呼吸するサカマキガイの体表にあるタンパク質に働きかけて、呼吸困難を引き起こさせて駆除するという効き目があります。
浄化槽の場合、生息する貝の居場所によって投与方法が変わりますが、サカマキガイは壁面にいることが多いので、希釈して散布することになります。
汚水にそのまま投与する場合もありますが、水に溶かしやすい粒状だったり液体だったりと、散布しやすい形状のものが主流です。
排水口や排水管をきれいに保つ
浄化槽への出入口となる排水溝や排水管は、汚れているとそれ自体も繁殖場所となってしまいます。
まずは住居の中から浄化槽へ侵入する機会を与えないように、水回りの清潔を保つように心がけることは、住人ができる一番の害虫予防であるといえるでしょう。
排水管にヌメリや汚れがないだけでも、害虫の発生は軽減します。
最近は流すだけで排水管がきれいになるという、とても優秀なアイテムが出回っています。
一度きれいにしたら汚れの再付着防止機能で1ヵ月は効果が持続する、株式会社スリーケーの「排水管洗浄液」も、そんなアイテムの一つです。
通常の掃除の延長線上でできる、手軽な害虫対策になります。
また、浄化槽を正常に保つことでも害虫の大量発生は抑えられます。害虫が大量発生してしまっていると、法定検査でも不適切とされ対処が必要になることがあります。
そうならないためにも、適切に浄化槽を保つことが大切です。
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浄化槽の臭いや、微生物の活性化などに効果的なので、日々の管理に使用を検討してみてください。
まとめ
浄化槽に虫がわく理由や対策よりも、浄化槽にわく虫がいかに気持ちが悪く迷惑であるかに特化した記事になってしまったようですが、いかがでしたか。
定期検査をきちんと受けていることが大前提ではありますが、それでも何らかの理由で、どうしても防ぎきれずにわいてしまう害虫に対しては、まず掃除をして清潔を保つことが一番大切だといえるでしょう。
私たちの生活と浄化槽を繋ぐのは、排水口であり排水管です。
まずはそこを「排水管洗浄液」できれいに保ち、予防することに力を入れてみませんか?
浄化槽を正常に保つことでも害虫の大量発生は抑えられます。
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