浄化槽の点検回数は何回?点検と検査の違いは?正しい頻度で浄化槽を大切に
浄化槽を正常な状態で使用していくためには、定期的な点検が必要と言われています。
しかし、法定検査が義務付けられていて、そのために汲み取りなどの清掃もしているのに、「点検」は必ず行わなければいけないのでしょうか?
「うちは新築したばかりだから」「故障しているような様子もないし…」など、法定検査以外については、なんとなく回数をこなさなくても良さそうな気がしてしまう「点検」ですが、実はその間隔や頻度は、法律によって定められています。
あまりよく知られていない、浄化槽の点検頻度や内容について、詳しく解説します。
目次
法定検査と保守点検の違い
「法定検査の時に点検できているんじゃないの?」と思っている方も多いと思います。
法定検査は1年に1回(全ばっ気型は半年に1回)必要だということは周知されていると思いますが、ではその法定検査と、保守点検とは具体的にどのような違いがあるのでしょうか?
法定検査は修理をしない
法定検査は、以下の3つの項目について検査します。
- 外観検査…浄化槽の設置・稼働状況、水流、悪臭や虫の発生の有無、消毒状況など
- 水質検査…浄化能力の確認のための、水質の透明度や生物化学的酸素要求量(BOD)などを測定
- 書類検査…保守点検や清掃の記録などを確認
浄化槽の清掃(汲み取り)は、最後に浄化槽内に水を張りますが、法定検査はその状態でないと行えません。
そして、上記を見ると分かりますが、浄化槽の法定検査では不具合を発見しても調整や修理は行いません。
それに対して、保守点検は、点検の結果によって必要であれば装置の整備や故障個所の修理を行います。
むしろ、保守点検の結果と、それによって故障が発覚し修理を行った場合にはその旨を、書類検査にて確認することになっています。
このことからも分かるように、保守点検をしていなければ、結果的には法定検査で「適性」とはされないのです。
保守点検は、有資格者によって行われる
それでは浄化槽の保守点検は、誰に頼むのでしょうか?
浄化槽の保守点検業務は「浄化槽保守点検業者」への依頼が必要です。
依頼する場合は、お住まいの自治体・保健所の担当課、又は浄化槽協会に連絡をして、登録のある業者の中から選ぶことになります(登録制度のない自治体の場合は浄化槽管理士に委託)。
ちなみに法定検査は向こうから検査をしにやってくるのではなく、管理者(使用者)が依頼をして行うもので、依頼をしないでいると自治体から勧告が来ます。
保守点検は勧告こそされませんが、行わないと法定検査で不備と判断されるので、どちらにせよ管理者自身が依頼する必要があります。
浄化槽法で決められた、保守点検の頻度
浄化槽には、微生物を含む活性汚泥と汚水を攪拌(ばっ気)する装置や、微生物の過ごしやすい環境を作るために空気を送り込む装置(ブロアー)、処理済の水を最終的に消毒する装置など、どれ一つ欠けても十分に機能しなくなる、重要な装置が複数設置されています。
保守点検では、それらの装置が正しく動いているかを点検し、必要であれば調整・修理を行い、消毒薬の補充や汚泥の処理状況の確認をし、年一回の清掃でことが足りるかどうか、正しい清掃時期の判定などを行います。
そうした保守点検は、単独処理浄化槽か合併処理浄化槽か、または汚水の処理方式や、種類(大きさ)によっても、頻度、つまり点検期間が異なります。
単独処理浄化槽
単独処理浄化槽は、トイレの汚水のみを処理する浄化槽のことで、保守点検は処理方式別にそれぞれ以下の頻度で行わなければなりません。
「処理対象人数」とは、その住居または施設で生活し、トイレを使用する人数を指します。
- 全ばっ気式方式の場合、処理対象人数が
20人以下…3ヵ月に1回
21人以上300人以下…2ヵ月に1回
301人以上…1ヵ月に1回 - 分離接触ばっ気方式・分離ばっ気方式又は単純ばっ気方式の場合、処理対象人数が
20人以下…4ヵ月に1回
21人以上300人以下…3ヵ月に1回
301人以上…2ヵ月に1回 - 散水ろ床方式・平面酸化床方式又は地下砂ろ過方式の場合
種類(処理対象人数)を問わず…6ヵ月に1回
単独浄化槽の新設は平成13年4月1日から禁止されているので、年々減ってきていますが、これから説明する合併処理浄化槽への転換については、今の時点でまだ命令までは出ていません。
環境やご近所に不都合のない利用のためにも、単独浄化槽の保守点検を指定回数行うことは必要不可欠といっていいでしょう。
合併処理浄化槽
合併処理浄化槽とは、トイレの汚水の他に、台所やお風呂場など、生活排水全ての浄化を行う浄化槽のことです。
一般家庭に多い方式は嫌気ろ床接触ばっ気方式ですが、油や野菜カスなどの食材や、髪の毛や洗濯カスなど、汚水の質も幅広くなりますので、どの方式もその構造は複雑です。
- 分離接触ばっ気方式、、又は脱窒ろ床接触ばっ気方式の場合、処理対象人数が
20人以下の場合…4ヵ月に1回
21人以上50人以下の場合…3ヵ月に1回 - 活性汚泥方式
処理対象人数に限らず…1週に1回 - 回転板接触方式、接触ばっ気方式又は散水ろ床方式
- 砂ろ過装置、活性炭吸着又は凝集層を有する場合…1週に1回
上記以外のスクリーン及び流量調整タンクが流量調整槽を有する場合…2週に1回
上記2項以外の浄化槽の場合…3ヵ月に1回
一か所の装置が上手く働かないと、他の装置にも影響が出てしまいきちんと浄化できず、環境汚染などに繋がってしまいますので、決められた間隔での保守点検が重要になります。
浄化槽の保守点検を詳しく知ろう
では、浄化槽の保守点検とは具体的にどのようなことをするのでしょうか?
年に何度も行われるけれど、費用はどのくらいかかるのでしょうか?
浄化槽の保守点検について納得した上で、適正な回数を受けましょう。
浄化槽の保守点検の内容
浄化槽の保守点検の具体的な内容は以下になります。
- 必要な装置が正常に働いているか
- 調整が必要な装置や機械はないか
- 故障個所の修理
- 消毒剤の補充
- 汚泥やスカム(浮いているスポンジ状のカス)の状況
- 必要になる清掃の頻度
本来保守点検は管理者が行うということになっていますが、以上のような点検を行うには専門的な知識が必要になり、事実上ご自身では点検できないので、浄化槽保守点検業者、又は浄化槽管理士に委託することになります。
そして点検が終わると、保守点検記録(点検票)が発行され、毎年行われる法定検査で書類検査されます。
この記録は最低でも3年間の保存義務があるので、分かるようにしてしっかり管理しましょう。
浄化槽の保守点検にかかる費用の相場
1年のうちに複数回が必要となる浄化槽の保守点検ですが、その都度汲み取りもしていたら、費用がすごくかかってしまうのでは?と心配になりますよね。
実は保守点検の度に汲み取りしなくてはいけない訳ではありません。
点検の結果として汲み取りを指示される場合はありますが、普段使っている状態のままの浄化槽を診て、様々な判断や、必要な対応を確認します。
浄化槽の管理費諸々については、点検業者によって設定金額が異なりますが、保守点検の年間の費用は大体2万円前後としているところが多いです。
保守点検の他、清掃料金や電気代(ブロワー稼働)などを合計すれば、年間5~6万円ほどになることも多いようです。
しかし、自治体によっては浄化槽の維持管理補助金制度があったり、業者と一括契約を結ぶことで割安になったりと、減額する方法はいくつかありますので、十分検討してみると良いでしょう。
浄化槽の保守点検を受けないことのデメリット
浄化槽の保守点検を受けないということは、何よりも故障の発見が遅れるということです。
浄化槽の修理費用の目安としては、地上に出ているブロアー部分の修理に関しては8~12万円ほど、腐食や地震などでヒビがあると槽ごとの交換となり、5人槽約35万~10人槽までで60万円前後と、かなり高額になります。
上記のような補助金制度の他に、火災保険に加入している場合は災害などが適用となる場合もありますが、保守点検を受けておけば防げるトラブルは多いと言えます。
浄化槽の寿命は30年と言われていますが、大切に使っていればこその耐久性だということを念頭に、正しい点検回数を維持しましょう。
まとめ
生活排水は、私たちが一般的な日常生活を送る中で発生します。
その生活排水を、そのまま放流して環境を汚染することがないように、浄化槽は日々汚水の浄化をしてくれます。
法定検査で適性という結果を得るために保守点検が必要なのは確かですが、そうではなく、私たちの生活を支えてくれる浄化槽を長く大切に使っていくための保守点検だと考えると、年数回という設定も、大げさではないと思えるのではないでしょうか?
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