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浄化槽の消毒剤はどうやって入れる?選び方やタイミング、注意点を解説

浄化槽

「浄化槽の消毒剤」と聞くと、排水口から塩素系漂白剤などを入れると浄化槽を消毒できる、と考える方もいらっしゃるかもしれませんが、浄化槽の消毒剤は、浄化槽自体を消毒するものではありません。

浄化槽の消毒剤はどこにどうやって、何を入れるのか、消毒剤を入れる正しいタイミングはいつなのかなど、注意点も含め解説します。

浄化槽ユーザーの方は、是非ご参考ください。

浄化槽の消毒剤とは

浄化槽

浄化槽は、中がいくつかの層に分かれています。

  1. 生活排水を液体と固体に分ける分離槽
  2. 空気を吹き込んで微生物の繁殖を促すばっ気槽
  3. 生活排水を浄化した微生物を沈殿させる沈殿槽
  4. 沈殿槽の上澄みを消毒して外へ送り出す消毒槽

以上のように、生活排水は順を追って浄化され河川や用水路などへ送り出されます。

浄化槽の消毒剤とは、浄化の最後の仕上げとして、放流する直前の生活排水(処理水)を消毒槽で消毒する薬剤のことです。

浄化槽で消毒剤を使う理由

自然には、水流で薄めたり、微生物などが有機物を分解したり、酸化・還元反応したりと、徐々に水をきれいにする様々な自浄作用があります。

虫の死骸や落ち葉など自然に発生する有機物は自浄作用が可能な範囲内ですが、生活排水の中に含まれる食べ残しや油などの有機物は、大量に流すと自浄作用の能力を超えてしまい、有機汚濁の原因となります。

有機汚濁とは、酸素が欠乏して魚などの水生生物が生息できない、いわゆる「どぶ川」の状態になることです。

浄化槽は、生活排水を河川に放流する前に浄化して、有機汚濁の原因とならないようにするための設備で、その中では、酸素のない環境で繁殖する嫌気性微生物と、酸素のある環境で繁殖する好気性微生物が、生活排水に含まれる有機物を食べて分解してくれます。

しかし、浄化槽内の微生物には、病原菌や大腸菌など人体に害のある病原性の細菌やウイルスは分解できないので、河川に放流する前に、一番最後の消毒層での殺菌が必要です。

浄化槽の消毒剤は、処理水を河川に放流する前の最後の仕上げに必要な薬といえるでしょう。

消毒剤を入れる場所

排水口から塩素系の薬剤を入れたり、マンホールを開けて直接分離槽に薬剤を入れたりすることで、最終的には処理水の殺菌になって放流できると思われる方もいるかもしれません。

しかし塩素系の薬は、浄化槽に対しては注意して使用しないと浄化槽内の微生物の働きを低下させてしまいますし、使用方法を守らないと処理水の殺菌にも効果がありません。

浄化槽の消毒剤は、放流先の側溝などに一番近いマンホールを開けると目に入る、縦に設置されている細長い筒「薬筒(やくとう)」に入れて使用します。

薬筒は、薬剤筒、または消毒筒とも呼ばれ、下方部分に細長い隙間(スリット)が入っています。

そこに消毒剤を入れ、処理水と接触させることで消毒していますが、長期間使用していると劣化し、ヒビが入ることもあるので、交換のため取り外しができるようになっています。

消毒剤の種類と威力

浄化槽で使用する消毒剤は強力な酸化剤で、有機系と無機系の、2種類の塩素剤があります。

以下は一例です。

【有機系塩素消毒剤】……塩素濃度が飛びにくく安定している、塩素臭が少ない

  • トリクロロイソシアヌル酸:溶けにくい固形、約90%が有効塩素、酸性
  • ジクロロイソシアヌル酸ナトリウム:溶けやすい、約60%の有効塩素、中性

【無機系塩素消毒剤】……塩素臭がある

  • 次亜塩素酸ナトリウム:液体、光に弱い、有効塩素が高くても12%、アルカリ性
  • 次亜塩素酸カルシウム:固形(溶け残る)、有効塩素は70%(水に溶かすと濃度は急降下)、中性

浄化槽の消毒剤は強力な酸化剤で殺菌力がとても強く、大腸菌やコレラ菌・チフス菌などの病原性細菌やウィルスを短い時間でしっかりと殺菌します。

台所用の塩素系漂白剤は次亜塩素酸ナトリウムの含有量が約6%とされているので、比べてみてもその威力がお分かり頂けるかと思います。

どちらを取り扱うときも、塩素系漂白剤を使用する際と同様に、マスクやゴーグル・ゴム手袋の着用が必須です。

消毒剤を入れる際の注意点

浄化槽

浄化槽の消毒剤も薬筒も、ホームセンターやネットで入手が可能ですが、個人で薬剤を補充すること、薬筒を自分で交換することなどは、おすすめしません。

本来は業者が補充するもの

浄化槽管理者(使用者)は、都道府県に登録のある、浄化槽の維持管理業者と維持管理契約を結ぶ決まりになっています。

その業者に依頼し保守点検を受けると、保守点検記録を渡され、それを知事が指定した検査機関による法定検査の際に提出することになっています。

年に1回の法定検査を受けるために、3~4ヵ月に1回の保守点検をする義務がありますが、浄化槽の消毒剤は、その際に業者が補充することになっています。

しかも補充のタイミングは保守点検時だけとは限らず、必要であれば適宜補充しなければいけません。

有機系消毒剤と無機系消毒剤を混ぜてはいけない

上述した2種類の消毒剤は、混ぜても相乗効果が得られるものではありません。

むしろ有機系消毒剤と無機系消毒剤を混ぜると、有毒ガスを発生するなど、最悪の場合、爆発の危険性があります。

「混ぜるな危険」と表示されているものは大抵、次亜塩素酸ナトリウムが関係しているので、複数の消毒剤を混ぜることは危険ですので絶対に止めましょう。

正しく使わないと効果がない

浄化槽に入れる消毒剤は、その用途で使用する専用のものを使用しますが、上述したように、2種類の塩素剤があり、そのメリットやデメリットも様々です。

消毒剤を選ぶ時は、その浄化槽に合ったものを選びますが、中で溶け残る、量が適切でないなど、使い方が合っていないと効果が激減してしまう可能性もあります。

浄化槽の専門的な知識を持つ業者に、最適な技能を以て確実な補充をしてもらうのがベストでしょう。

浄化槽を正しく使うために

浄化槽

浄化槽の適切な場所に適切な消毒剤を設置することが、浄化槽を正しく使う理由である「環境保全」に繋がりますが、他にも浄化槽を正しく使うべきポイントがあります。

塩素系や酸性の洗剤を大量に使わない

これは前述しましたが、浄化槽の中では様々な微生物が、それぞれ分解の得意な場所で生活排水を浄化してくれています。

しかし、掃除時などに塩素系や酸性の薬剤などをなんのためらいもなく大量に使っていると、微生物の働きに悪影響が出てしまいます。

実際に浄化槽の機能障害の原因のうちの20%は、パイプ用洗剤やキッチン用漂白剤に含まれる次亜塩素酸ナトリウムだという調査結果も発表されています。

家庭洗剤と浄化槽の機能障害

引用元:水浄化フォーラム -科学と技術-

塩素系薬剤を掃除などで使用する方法については、使用する回数を減らす、できれば酸素系漂白剤を使う、大量の水と一緒に流すなど、微生物の住み心地に配慮した使い方を心がけましょう。

浄化槽に対する洗剤の使用については、こちらの記事が参考になります。

浄化槽に使える洗剤と使えない洗剤とは?バイオを強化する方法を解説

油や食材を流さない

浄化槽内の微生物は、何でもかんでも分解できるわけではありません。

台所から出る排水の中で一番多い汚れは「油(脂)」ですが、微生物はこの油の分解が苦手です。

揚げ物をした油はもちろんのこと、お皿に付いた油も流す前にキッチンペーパーなどで拭き取るなどして、なるべく排水口に油を流さないようにしましょう。

他にも、流れやすい小さな野菜くずや食べ残した汁物などを、何も気にせず排水口に流してしまうことが水質汚染に繋がりますので、普段から気を付けましょう。

しっかり保守点検・法定検査

お住まいの家の中でも大きい設備のひとつである浄化槽は、耐用年数が30~50年といわれています。

本体に何か不具合があった場合、修理に大体50~70万円ほど、交換となると施工費も含め100万円前後と、かなり高額になります。

浄化槽となるべく長く付き合えるように、定期的に保守点検を受け、年1回の法定検査もちゃんとクリアできるよう、消毒剤を入れる消毒槽だけでなく、普段の使い方や全体的なメンテナンスにも気を配りましょう。

微生物が暮らしやすい環境を作る

浄化槽の使用方法に気を付けるのは勿論ですが、やはり臭いや汚れが気になるのは致し方ありません。

そんな時は漂白剤や強い洗剤に頼りがちですが、バイオ系の商品も選択肢としてあります。

株式会社スリーケーの「浄化槽汲み取りトイレ消臭剤」や「排水管洗浄液」は、ケミカルフリーで浄化槽内の微生物の働きにも影響を与えません。

しかも、大学との10年をかけた研究成果において、この排水管洗浄液を排水口から流すと、汚泥削減に貢献できることが分かっており、かつ、浄化槽の機能活性にも効果があるとされています。

詳しくはこちらもご覧ください。

お問い合わせ:排水管洗浄液は浄化槽の微生物(バクテリア)に悪影響を与えますか?

浄化槽の臭気改善

浄化槽のメンテナンスのひとつに、排水口から流すだけという気軽さを取り入れて、微生物の環境整備に繋げてみませんか?

まとめ

浄化槽の消毒剤について、どうやって入れるのか、いつ入れるのか、注意点などを交えて解説してみましたが、参考になりましたでしょうか?

自分で入れていらっしゃる方は、何かあっても自己責任になりますのでおすすめはしませんが、危険な薬剤を取り扱っているということをしっかり自覚し、安全に行ってください。

消毒剤の補充時期や、薬筒の交換時期などの当たりを付けられるように、保守点検はきちんと受けておきましょう。

浄化槽を長く使っていくためのメンテナンスとしては「浄化槽汲み取りトイレ消臭剤」や「排水管洗浄液」をどうぞご検討ください。

浄化槽汲み取りトイレ消臭剤」「排水管洗浄液」はこちらからご購入いただけます。