浄化槽のメリット・デメリットは?浄化槽と下水道の違いも知ろう!
日常生活において私たちはお風呂やトイレ、台所などさまざまな場所で水を流しています。
当たり前になりすぎて流れた水がどこに行くかを考えたことがある方はほとんどいないのではないでしょうか。
生活をしていくうえで欠かせない排水ですが、流れる・処理の先は浄化槽と下水道のどちらかになります。
今回は浄化槽のメリットやデメリットについてと、浄化槽と下水道の違いについて紹介していきます。
目次
浄化槽の役割と特徴を知る
浄化槽とは、公共の下水道が配管されていない家庭に設置されるもっとも身近な汚水処理設備です。
浄化槽の中に生息する微生物を利用し、家庭のトイレやキッチン、お風呂場などから流れてくる生活排水をきれいにして河川に放流します。
生活排水をそのまま放流するのではなく、汚れを取り除いてから放流する役割を担う浄化槽は地球環境保護の観点から非常に重要な役割を担う設備です。
生活排水をそのまま河川に放流してしまうと、川や海はすぐに汚れてしまいそこに生息する魚や貝といった海洋生物は死んでしまいます。
魚や貝がいなくなると、それらを食べていたほかの生物が減少してしまい食物連鎖が壊れてしまう可能性が高いでしょう。
浄化槽の大きな特徴として、窒素・リン・BODの除去が高度に処理可能なタイプなど幅広い種類がある点です。
水道汚濁や富栄養化を高いレベルで防止し、地球環境保全に役立ちます。
また、設置場所は車1台分程度のスペースがあれば十分で、地中に埋めて設置するため目立たず場所も取らない点も大きな特徴・利点です。
下水道のような長い配管が不要なため、災害に強い点も特徴の1つです。
浄化槽のメリット
浄化槽設置のメリットは大きく4点あります。
- 定期的な清掃・点検により排水処理の維持が可能
- 水道水を多く使う家庭の場合、下水道使用料金を安く抑えられる場合がある
- 下水設置にかかる工事費用よりも安い場合がある
- 下水道を使わない場合、市町村に最初に収める受益者負担金が不要になる
浄化槽を設置した場合、浄化槽の清掃や点検は浄化槽を設置している各家庭に義務付けられます。
清掃や点検の義務は負担にはなりますが、適切に清掃・点検を実施すれば排水処理を維持できるため環境保護・維持に貢献可能です。
また、下水道使用料金は下水道の使用量によって算出されます。
下水道使用料金は使う水が多いほど料金が高くなりますが、浄化槽を使う場合は下水道を使用しないため、使用料金が抑えられます。
下水道を使用する際、市町村に受益者負担金を支払う必要がありますが、浄化槽があれば下水道を使用しないため不要です。
様々なコストを軽減できる点が、浄化槽を利用するメリットといえるでしょう。
浄化槽のデメリット
浄化槽のデメリットは大きく3つです。
- 各家庭で浄化槽の定期的な清掃やメンテナンスが義務付けられる
- 浄化槽本体や各種部品には寿命があり、交換の必要性がある
- 浄化槽内の微生物が弱ってくると悪臭が生じる
浄化槽利用の最大のデメリットは、各家庭で定期的な清掃やメンテナンスが義務付けられている点です。
定期的な清掃やメンテナンスといっても、個々人でマンホールを開いて清掃作業をするわけではありません。
浄化槽の清掃は専門の業者がいるため、年に少なくとも1回は依頼し清掃を実施するようにしましょう。
浄化槽の点検は浄化槽の規模や種類によって必要な回数が決められているため、専門業者に相談し適切な時期に点検を受けられるよう準備が必要です。
浄化槽本体は20~30年程度、主要部品は5~10年程度とそれぞれ寿命があるため、時期がきたら交換しなくてはなりません。
また、浄化槽内の微生物が弱ると悪臭の原因となるため漂白剤などの刺激物を流さないよう注意が必要です。
浄化槽と下水道の違いとは
浄化槽と混同しがちなのが下水道です。
浄化槽・下水道どちらも汚れた水をきれいにしてから河川に放流する汚水設備である点は共通しています。
浄化槽は自宅で汚水処理を行うのに対し、下水道は市町村が管理する汚水処理場で処理を行う点がそれぞれの違いです。
下水道が設置されている家庭では、トイレやキッチンから流れる生活排水は下水道を通り、下水道本管に合流します。
下水道本管合流後、市町村が管理する汚水処理施設まで運ばれきれいにされた後に河川へ放流されます。
各家庭で生活排水をきれいにできるかどうかが、浄化槽と下水道の最大の違いといえるでしょう。
浄化槽の仕組みを知る
浄化槽には主に2種類あり、現在の浄化槽の主流は合弁浄化槽です。
合弁浄化槽は大きく5つの部品・エリアで構成されるため、それぞれの概要について紹介します。
分離槽
汚水が最初に入ってくるエリアで、汚水を液体と固体に分離します。
分離槽に入った汚水は上層部には水より軽い固体、下層には水より重い個体をそれぞれ沈殿させ、中間の液体を次の槽へ送り出すのが役割です。
ばっ気槽
分離槽から入ってきた液体(汚水)を餌にする微生物が繁殖するエリアです。
ばっ気槽は名前の通り、空気を送り酸素を好む微生物を繁殖させていて、接触ばっ気槽と分離ばっ気槽があります。
接触ばっ気槽 | 分離ばっ気槽 |
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沈殿槽
ばっき槽で繁殖した微生物や固形の汚れを沈殿させ、きれいになった水を消毒槽に送り沈殿物をばっ気層に戻します。
消毒槽
浄化槽から河川へ生活排水を放流するためには、消毒が必要です。
消毒には塩素剤が用いられ、多くの場合取り扱いの簡便さと有効期間の長さから固形タイプの消毒剤が使用されています。
ブロアー(エアーポンプ)
ばっ気槽の中には汚水の撹拌と微生物の繁殖のために空気を送り込む必要があり、その役目を果たすのがブロアーです。
ブロアーが故障すると微生物が死滅し悪臭の原因となるため、ブロアーの果たす役割は重要です。
浄化槽の種類について
浄化槽は、単独浄化槽と合併浄化槽の2種類があります。
現在は、単独浄化槽の新設は環境省より禁止されているため今後は浄化槽は合併浄化槽のみとなります。
単独浄化槽
トイレから出た汚水のみをきれいにし、側溝に放流する働きを持つ浄化槽です。
キッチンやお風呂などから出た汚水には対応していないため、水環境に悪影響を及ぼします。
そのため、単独浄化槽は現在は縮小・廃止の方向に進んでおり、市町村によっては合併浄化槽への工事費用を補助してくれる制度もあります。
合併浄化槽
合併浄化槽はトイレだけでなく、お風呂・洗面所・台所など家庭のあらゆる生活排水を浄化処理できるタイプの浄化槽です。
単独浄化槽と比較して浄化機能が高く、現在の浄化槽の主流となっています。
単独浄化槽のBOD(生物が水中にある有機物を分解するのに必要とする酸素量)除去率が65%以上に対して、合併浄化槽は90%以上に定められています。
浄化槽と下水道を比較する
浄化槽と下水道を以下の3つの観点から比較していきます。
- 年間の使用料金
- 工事費用
- ランニングコスト
それぞれ順番に紹介します。
1.年間の使用料金
1年間の下水道の浄化槽でかかる料金は以下のとおりです。
下水道でかかる費用・料金 | 浄化槽でかかる費用・料金 | |
費用 | 月2,500円~3,000円前後 |
|
合計 | 30,000円~36,000円前後 | 70,000円~80,000円程度 |
家族の人数や年間でどの程度の水道を使うかによって料金はもちろん異なりますが、下水道の方が料金負担は低いです。
2.工事費用
下水道の工事は埋没されている前面道路まで下水道管を延長させる工事を実施します。
工事費用は接続する前面道路の下水道管までの距離によって異なりますが、一般的には30~50万円程度です。
浄化槽の設置費用は、5人家族が使用するサイズ感で80~100万円程度の工事費用がかかります。
工事費用は施工業者や地域によって差は生じますが、一般的にかかる費用相場としては浄化槽の工事費用の方が高くなる傾向にあります。
3.ランニングコスト
浄化槽の使用に関しては、点検費用や清掃費用とは別に電気代や修理費用といった諸経費が発生します。
浄化槽内の微生物の繁殖には空気の循環が必要であり、常にポンプを回し浄化槽内に酸素を循環させておかなくてはなりません。
また、浄化槽は経年劣化などで故障するリスクもあり、周辺の機器も同様に故障のリスクがあります。
浄化槽は個人所有になるため、これらの諸経費は全て所有者が負担しなくてはなりません。
一方、下水道は公共設備となるため、諸経費等を自分で負担する必要はありません。
浄化槽から下水道へ切り替えるには
浄化槽から下水道へ切り替えるためには、住んでいる場所の下水道が使用可能かと市役所の許可が必要です。
この2つをクリアできれば必要な工事を受けられ、浄化槽から下水道への切替ができます。
工事費用は下水道までの距離感によって異なりますが、一般的な相場としては50~80万円程度と言われています。
まとめ
浄化槽と下水道どちらを使用するかは個人の裁量では選べません。
浄化槽を利用する場合は定期的なメンテナンスが重要です。
生活をしていく以上、必ず生活排水は生じます。
浄化槽を使用しなくてはいけない場合、必要な知識を身につけ適切な利用をし日々の生活に支障をきたさないようにしましょう。
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